年収の壁、2026年はパートスタッフにどう答える?年末のシフト相談の前にサロンが確かめる所得税と扶養の線
閉店後のレジ締めのとき、パートのスタッフから「年内はあと何時間入れますか。扶養内でいたいので」と聞かれる場面を考えます。答える前に、どの「扶養」の話かを聞き返します。2026年は、本人の所得税、家族の税の控除、家族の健康保険の扶養で、金額の線がそれぞれ違うためです。
国税庁の令和8年度(2026年度)税制改正の案内と、日本年金機構・厚生労働省の案内の本文を確かめ(2026年10月23日時点)、サロンがスタッフに答える前に押さえる線と、年末調整までに店でやることを整理しました。住民税は線の考え方が所得税と違うため、ここでは扱いません。
線は3本。店が渡すのは給与の見込みと通知書の中身
本人の所得税は、給与だけなら178万円以下で0円です(2026・2027年分)。家族の税の控除は配偶者や扶養親族の給与136万円以下、家族の健康保険の扶養は年間収入130万円未満(配偶者以外の19歳以上23歳未満は150万円未満、60歳以上・障害者は180万円未満)が線です。家族の税の控除と健康保険の扶養は家族の勤め先や健康保険が判定するので、店は給与の見込みと、労働条件通知書に書いた労働時間と手当の額を正確に渡します。勤め先の社会保険の約106万円の線は、10月1日に無くなりました。
「扶養内で」は3つの線 ─ 本人の所得税・家族の税の控除・家族の健康保険
「扶養内」という言葉は、1つの金額を指していません。スタッフの頭にあるのが、自分に所得税がかからない線なのか、夫や親が税の控除を受けられる線なのか、夫や親の健康保険に入ったままでいられる線なのかで、答えが変わります。
税の2本はどちらも所得税の決まりで、健康保険の扶養は健康保険の決まりです。判定するところも、3本でそれぞれ違います。下の表は、ほかに所得が無く、収入が給与だけの場合の目安です。
| 線 | 2026年の金額(給与だけの場合) | 超えると | 判定するところ |
|---|---|---|---|
| 本人の所得税 | 給与178万円以下なら所得税0円(2026・2027年分) | 超えた分に所得税がかかる | 店の年末調整(自店に扶養控除等申告書を出している場合)、または本人の確定申告 |
| 家族の税の控除 | 配偶者・扶養親族は給与136万円以下 | 続き柄によって、控除額が段階的に下がるか、扶養控除が無くなる(3つ目の章) | 家族の勤め先の年末調整、または家族の確定申告 |
| 家族の健康保険の扶養 | 年間収入130万円未満(配偶者以外の19歳以上23歳未満は150万円未満、60歳以上・障害者は180万円未満) | 扶養から外れ、自分で健康保険に入る。20歳以上60歳未満の配偶者は、国民年金の第3号からも外れる | 家族の勤め先を通じて届け出る先(協会けんぽなら日本年金機構、健康保険組合ならその組合) |
社会保険料などの控除があれば、所得税の線は表より上に動きます。健康保険の扶養には金額のほかにも条件があり、日本年金機構の案内では、同居しているなら家族(被保険者)の収入の半分未満であることも要件です。
この3本とは別に、スタッフ自身が勤め先の社会保険に入る線(約106万円とされてきた線)もあり、10月1日に賃金の要件が無くなりました。こちらは5つ目の章で触れます。ここからは表の上から順に、まず本人の所得税の線を見ます。
本人の所得税は給与178万円まで ─ 2026・2027年分の上乗せを含む数字
国税庁によると、令和8年度税制改正で基礎控除と給与所得控除の最低保障額が引き上げられ、2026年分(令和8年分)以後の所得税に適用されます(施行は原則2026年12月1日)。178万円は、この2つの控除を足した額です。給与だけの人で計算すると、次のようになります。
- ・給与所得控除の最低保障額: 65万円から74万円に引上げ
- ・基礎控除: 合計所得金額489万円以下の人は104万円(令和8・9年分)
- ・給与178万円から74万円を引いた所得は104万円。基礎控除と同じ額なので、所得税は0円
どちらの額も、令和8・9年分(2026・2027年分)に限った上乗せ(租税特別措置法の特例)を含みます。国税庁の「源泉所得税の改正のあらまし」には、令和10年分(2028年分)以後の額が別の列で載っており、上乗せが無くなる分だけ低い額になっています。今の法令のままなら、178万円の線を使えるのは2027年分までです。所得税が0円でも、住民税は別の基準でかかることがあるので、スタッフには「所得税の線」と分けて伝えます。
家族の税の控除の線 ─ 配偶者と扶養親族は給与136万円以下
スタッフが「夫の扶養」「親の扶養」と言うとき、税の話なら、家族が受ける配偶者控除や扶養控除の線を指しています。国税庁のタックスアンサーでは、令和8年分の控除対象配偶者の要件は、合計所得金額62万円以下、給与だけなら給与収入136万円以下です(令和7年分は123万円以下、令和6年分以前は103万円以下)。扶養親族も、令和8年分は合計所得金額62万円以下(給与136万円以下)になりました。
136万円を超えたあとは、家族との続き柄で分かれます。
- ・配偶者: 給与207万円以下まで配偶者特別控除。収入が増えるにつれて控除額が段階的に下がる
- ・19歳以上23歳未満の親族(配偶者以外): 給与197万円以下まで特定親族特別控除。同じく段階的に下がる
- ・それ以外の扶養親族(16〜18歳、23歳以上の子や親など): 136万円を超えると扶養控除が無くなる
19歳以上23歳未満かどうかは、その年の12月31日の年齢で見ます。配偶者控除も配偶者特別控除も、控除を受ける家族本人の合計所得金額が1,000万円以下であることが条件です。家族の控除の額は家族の勤め先の年末調整で決まるので、店が答えることではありません。
健康保険の扶養は見込みの年間収入で判定 ─ 4月から労働条件通知書で見込む取り扱い
家族の健康保険の扶養(被扶養者)は、税とは別の線です。年間収入の要件は上の表のとおりで、19歳以上23歳未満(配偶者を除く)の150万円未満は、2025年10月1日以降の期間に使われます(日本年金機構)。
税と違うのは、数え方です。日本年金機構は、協会けんぽに入っている家族の手続きの案内で、年間収入を過去の収入ではなく、扶養に入る時点から先の1年間の見込みとしています。給与で考えると、月額108,333円以下なら要件を満たすという案内です。健康保険組合では、確認の時期や出す書類が組合ごとに違うことがあるので、家族の加入先に確かめてもらいます。
2026年4月1日からは、新しい取り扱いも始まっています。労働条件通知書などに書かれた賃金から見込まれる年間収入が130万円未満(年齢などにより150万円・180万円未満)で、ほかの収入が見込まれないなどの条件を満たせば、原則として被扶養者として扱うというものです。ここでいう賃金には、諸手当と賞与も含まれます。
労働条件通知書は、店が書く書類です。日本年金機構は、この取り扱いで認定できない例として、次のようなものを挙げています。
- ・被扶養者になった日から数えて、通知書の契約期間が1年未満
- ・「シフト制による」のように、労働時間がはっきりしない
- ・「通勤手当有」のように、手当の額がはっきりしない
通知書は、実際の契約どおりの時間と金額で書くことが前提です。契約の時点で時間が決まっていないシフト制や、契約期間が1年未満の場合は、この取り扱いは使えず、給与明細書などによる従来の判定になります(厚生労働省Q&A)。
厚生労働省の通知では、この取り扱いで認定された人に契約のときに想定していなかった臨時の収入があり、結果として年間収入が130万円以上になった場合でも、その収入が社会通念上妥当な範囲にとどまれば、扱いを変える必要はないとされています。一方で厚生労働省のQ&Aは、臨時の収入を当て込んで通知書の賃金や労働時間を不当に低く書いていた場合など、臨時の収入で実際の年間収入が社会通念上妥当な範囲を超えて130万円を大きく上回っていた場合は、認定を取り消してよいとしています。
スタッフ自身の社会保険の加入 ─ 約106万円の賃金要件は10月1日に撤廃、短時間で働く人の要件は51人以上の勤め先が対象
3本とは別のもう1本は、スタッフ自身が勤め先の社会保険(健康保険・厚生年金保険)に入る線です。日本年金機構によると、パートなど短時間で働く人の加入の要件のうち、「月の所定内賃金が8.8万円以上」という要件が、2026年10月1日に無くなりました(令和7年の年金制度改正法による)。年収に直して約106万円とされてきた線です。いま残っている主な要件は、次のとおりです。
- ・週の所定労働時間が20時間以上
- ・2か月を超えて雇用される見込みがある
- ・学生ではない(定時制・通信制の課程に在学する人や休学中の人などは対象)
- ・勤め先が、厚生年金保険の被保険者51人以上の企業等
人数は短時間労働者を除いた被保険者の総数で数え、1年のうち6か月以上51人以上になる見込みがあるかで判断します。法人なら、同じ法人番号のすべての店舗の合計です。51人以上のサロンでは、要件に当たるスタッフの加入の手続きを店が行います。勤め先の社会保険に入ると家族の健康保険の扶養からは外れるので、こうしたサロンでは週20時間も、シフトの相談で伝える線になります。
51人に届かないサロンには、この短時間労働者の要件は今は当てはまりません(労使の合意で申し出て、任意特定適用事業所になった店を除く)。ただし社会保険の適用事業所では、週の所定労働時間と月の所定労働日数が正社員の4分の3以上のスタッフは、店の人数に関係なく加入の対象です(日本年金機構)。
日本年金機構の案内では、強制で適用事業所になるのは、法人の事業所と、従業員が常時5人以上いる個人の事業所(サービス業などを除く)です。個人経営のサロンは、自店が適用事業所かどうかを先に確かめます。また日本年金機構は、2027年(令和9年)10月から短時間労働者の要件の対象を36人以上の企業等に広げると案内しています。店舗を複数持つサロンは、法人全体の人数を数え直しておきます。
シフトの相談を受けたときに聞く3つ ─ 判定は家族の勤め先と健康保険
ここで、冒頭のレジ締めの場面に戻ります。「扶養内で」と言われても、すぐに1つの金額を上限にはしません。編集部では、次の3つを聞いてから残りの月のシフトを一緒に決める順番に整理しました。
- ・どの扶養の話か(本人の所得税、家族の税の控除、家族の健康保険のどれか)
- ・家族の勤め先と、加入している健康保険(協会けんぽか、健康保険組合か)
- ・年齢と、ほかの勤め先の収入(19歳以上23歳未満か、掛け持ちがあるか)
掛け持ちは、店の給与だけを見ていると抜け落ちます。厚生労働省のQ&Aでは、4月からの健康保険の取り扱いで勤め先が複数あるときは、各勤め先の通知書の金額を合算して判定し、どこか1つでも通知書から見込めなければ従来の判定になります。ほかの勤め先に扶養控除等申告書を出しているスタッフは、自店では年末調整の対象になりません(国税庁タックスアンサーNo.2665)。
最低賃金の発効日は都道府県ごとに違い、11月・12月に発効する府県もあることは、9月18日の記事『最低賃金、10月から上がります。サロンの求人票と店頭の「時給」を直す順番と、AIに渡す数字』でお伝えしました。改定に合わせて時給を上げたサロンでは、同じシフトのままでもスタッフの年収の見込みが上がり、線までの余裕が小さくなります。
確かめる線が決まったら、残りの時間の目安を出します。
- ・税の線: その年に支給日が来る給与で数える(国税庁の所得税基本通達36-9)。12月の勤務分を1月に払う店なら、その分は翌年に入る。線の金額から今年すでに払った給与を引き、改定後の時給で割る。非課税の範囲の通勤手当は入らない
- ・健康保険の扶養: 改定後の時給と週の時間に、通勤手当などの手当と賞与も加えて、これから先の月々の収入の見込みを出す。130万円未満の線なら、月額108,333円以下が日本年金機構の目安
年末の人手不足などで店がシフトを増やし、健康保険の線を一時的に超えるときは、一時的な収入であることを店が証明する取り扱いがあります。使えない場合も含めて、このあとの「よくある質問」にまとめました。答え方の違いを並べると、次のようになります。
避けたい答え方
「103万円を超えないように組みますね」と、店が線を1本決めて答える。どの扶養の話かによっては、この答えのままでは扶養から外れることがある。
整えたい答え方
「どの扶養の話か、ご家族の勤め先に確かめてもらえますか。こちらからは今年の給与の見込みと、労働条件通知書の時間と手当をお渡しします」と、判定するところと、店が渡すものを分けて伝える。
家族の税の控除と健康保険の扶養を判定するのは、家族の勤め先や加入している健康保険です。店が責任を持って渡せるのは、自店の給与の見込みと、店が書いた通知書の中身です。
12月の年末調整で店がやること ─ 11月までの源泉徴収はこれまでどおり
シフトの相談の次に来るのが、12月の年末調整です。国税庁のQ&Aによると、令和8年11月までの給与の源泉徴収事務に変更はありません。12月の年末調整では、引上げ後の基礎控除と、給与所得控除後の金額を求める改正後の表(国税庁が作るもの)を使って1年間の税額を計算します。そのうえで毎月引いてきた税額と精算し、引きすぎていた分はスタッフに還付します。
自店に扶養控除等申告書を出しているスタッフなら、本人の所得税の線はここで店が扱います。スタッフ自身が子や親を扶養していれば、その扶養控除も店の年末調整に入ります。年末調整の前に店でやることは、次の4つです。
年末調整の前に店でやる4つ
- ・令和8年分の基礎控除申告書(配偶者控除等申告書などとの兼用の様式)を配る。様式は前年分から変わっている。改正を反映した申告書は、12月1日より前に出されても受け取ってよい(国税庁Q&A)
- ・改正で新しく扶養控除の対象になる家族がいるスタッフには、扶養控除等申告書を出してもらう。「異動月日及び事由」欄には「令和8年12月1日 改正」などと書く
- ・12月の給与明細を渡す前に、精算で戻る税額があることと、その理由を店内で共有しておく
- ・年の途中で辞めて年末調整を受けていない人には、改正後の控除を受けるには確定申告が要ることを伝える。源泉徴収票をすでに渡した人も含める
休業や休職をしていて年末までに復職せず、11月30日以前の最後の給与のときに年末調整を受けた人も、同じく確定申告が要ります(国税庁Q&A)。源泉徴収票の源泉徴収税額が0円なら、確定申告をしても還付される税金はありません。
シフトの計算や案内文をAIに頼むときに渡さないもの
残りの時間の計算や、年末調整の案内文の下書きをAIに頼むなら、渡すのは時給、週の勤務時間、今年すでに支払った給与の合計といった数字だけにします。スタッフの氏名、マイナンバー、家族の名前や勤め先、家族の収入は入れません。家族の情報は、年末調整のためにスタッフから預かったものです。シフトの計算や案内文の下書きには要らないので、入れません。
AIが出した時間数は、時給と時間の掛け算を表計算で一度確かめてから、シフト表に写します。年収の壁そのものをAIに聞くときは、答えがいつの時点の制度かを確かめます。出典の見方は、8月7日の『AIに調べものを頼む前に。サロンが見たい「出典チェック」3つの基本』にまとめています。
よくある質問
「103万円を超えないように」と言われたら、そのとおりにシフトを減らせばいいですか?
年末だけシフトを増やしたら、健康保険の扶養から外れますか?
美容学校に通う学生のアルバイトは、線が違いますか?
参考にした情報
税の内容は、国税庁の源泉徴収義務者向けの改正の案内と、タックスアンサーの「配偶者控除」「扶養控除」「特定親族特別控除」「年末調整の対象となる人」の本文と、給与の収入の時期を定めた所得税基本通達36-9で照合しました(2026年10月23日時点)。健康保険の扶養は、日本年金機構の案内(家族を被扶養者にするとき・労働契約内容による認定・19歳以上23歳未満の年間収入要件)と、厚生労働省の「年収の壁への対応」に載る通知(労働契約内容による年間収入の取扱い・2025年10月1日)とQ&A(事業主の証明・労働契約内容による判定)を参照しています。社会保険の加入の要件は、日本年金機構の「短時間労働者の適用拡大」「適用事業所と被保険者」とガイドブックによります。
なお、厚生労働省の「年収の壁への対応」のページには、撤廃前の書き方(「3年以内に撤廃」)が残っています(2026年10月23日時点)。撤廃の日付は、日本年金機構のお知らせによります。金額の線を自店のスタッフに当てはめるときは、税理士や社会保険労務士、所轄の税務署、年金事務所、家族が加入している健康保険にご相談ください。
出典
年末調整の案内文の指示を、店で揃えておきたい方へ
GlamAIサロン版のプロンプトライブラリには、よく使う指示文を登録して、チーム全員で共有できます。スタッフ向けの年末調整の案内や、シフト相談への返事の下書きを頼む指示を一度登録しておけば、氏名や家族の情報を入れない形で、誰が頼んでも同じ指示を使えます。
プロンプトライブラリの使い方を見るスタッフ向けの案内文の下書きを、GlamAIサロン版で試したい方へ
「プロンプトライブラリを使ってみたい」「店のみんなで同じ指示を使いたい」など、使い方で気になる点があればお気軽にご相談ください。
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