求人原稿をAIに任せる前に。サロンの募集で必ず載せる項目と「変更の範囲」
サロンからよく伺うのは、人が足りない、というご相談です。原稿を書く時間がないからAIに頼みたい、と続きます。
先に結論を書きます。AIに渡すのは、条件が固まったあとです。求人票は募集の広告である前に、労働条件の開示だからです。
そしてもうひとつ、混ざりやすい点があります。広告に表示するものと、応募者に明示するものは、職業安定法の中で別の条文に分かれています。
原稿より先に決めるもの
求人の出来は、文章のうまさより「載せる条件がそろっているか」で決まります。募集広告に表示する6つの情報と、募集にあたって明示する労働条件は、それぞれ別に決められています。令和6年4月からは明示する事項が3つ増えました。AIに書かせるのは、その中身を自店で確定させたあとです。
求人票は集客の文章ではなく条件の開示
職業安定法の第5条の4では、広告等により労働者の募集に関する情報を提供するとき、虚偽の表示または誤解を生じさせる表示をしてはならないと定められています。対象は紙の広告だけではありません。厚生労働省の案内では、インターネットやX等のSNSを含む広告等が挙がっています。
そのうえで、募集広告に表示する情報を6つ挙げています。同省の案内では、これを「6情報」と呼びます。
募集広告に表示する6情報
- ・募集主の氏名または名称
- ・住所
- ・連絡先(電話番号など)
- ・業務内容
- ・就業場所
- ・賃金
同じページの募集主向けQ&Aに、細かい但し書きが付いています。住所はビル名・階数・部屋番号まで書くこと。連絡先は電話番号、メールアドレス、自社サイトの問い合わせフォームへのリンクのいずれかであること。
見落としやすいのがもうひとつあります。6情報を書いたページのリンクを貼るだけでは足りず、募集情報を出す広告そのものに6情報を書く必要がある、と示されています。サロンの募集は、求人媒体だけでなくストーリーズや店頭の貼り紙から始まることもあります。その場面で、ここが抜けます。
同じQ&Aでは、業務内容・就業場所・賃金について、職業安定法第5条の3や労働基準法第15条で求められるのと同じ詳細さまでは必ずしも要らない、とされています。ただし、広告を見た人が募集主について誤解しないよう、この3つは記載する必要があるとも書かれています。
つまり、この6情報は広告に出す分です。応募者に渡す労働条件はこれとは別にあり、令和6年4月から3つ増えました。
令和6年4月に増えた3つの明示事項
厚生労働省のリーフレット「求人企業の皆さまへ」には、最低限明示しなければならない労働条件が記載例つきで並んでいます。求人票の欄をそろえるときは、ここを写すのが早いです。
- ・業務内容/就業場所/就業時間/休憩時間/休日/時間外労働
- ・契約期間(契約の更新、更新上限)/試用期間
- ・賃金(固定残業代を採る場合は、基本給・手当の内訳・何時間分か・超えた分は追加支給、まで書く)
- ・加入保険(雇用保険、労災保険、厚生年金、健康保険)/受動喫煙防止措置(屋内禁煙など)
- ・募集者の氏名または名称
この並びに、令和6年4月1日から3つが加わりました。うち2つが「変更の範囲」、残る1つが有期契約の更新の基準です。サロンでは店舗が増えたり減ったりしますし、入社のときはアシスタントでも、数年後には店販や新人教育に回ることもあります。その「ありうる範囲」を先に書いておく、という考え方です。
| 追加された明示事項 | サロンで書くとしたら |
|---|---|
| 従事すべき業務の変更の範囲 | (雇入れ直後)アシスタント業務 (変更の範囲)スタイリスト業務、店販、SNS運用、新人教育 |
| 就業の場所の変更の範囲 | (雇入れ直後)◯◯店 (変更の範囲)市内の系列2店舗 |
| 有期労働契約を更新する場合の基準 | 契約期間は◯か月。契約の更新 有(勤務成績、態度、能力により判断)。通算契約期間は◯年を上限とする |
3つ目は、契約期間を区切り、更新することがある場合の明示事項です。3か月ごとに更新するパートを採るなら、この項目が要ります。一方で、パート・アルバイトでも契約期間の定めがなければ当たらず、産休の代替でも更新の可能性がなければ当たりません。
同じ資料のQ&Aには、書かなくてよい場面も並んでいます。
- ・求人の内容に鑑みて、業務や就業場所に変更がない業種・職種・雇用形態であるような場合は、変更の範囲を記載する必要はない(問1-3)
- ・更新回数や通算期間の上限を設けていない場合は、「上限なし」と明示する必要はない(問1-5)
書ききれないときの扱いも決まっています。求人広告のスペースが足りない等、やむを得ない場合に限り、「詳細は面談時にお伝えします」などと付したうえで、労働条件の一部を別のタイミングで明示することも可能とされています。ただし原則として、面接など求職者と最初に接触する時点までに全ての労働条件を明示する必要があります。
自店の募集でどの項目をどこまで書くか、就業規則や契約書にどう落とすかは、ハローワークや社会保険労務士にご確認ください。ここまでが、AIに渡す前に自店で確定させておく範囲です。
AIに渡す情報の型 — 求人版
条件が固まったら、ようやく原稿です。下書きを頼むときは、条件を箇条書きのまま渡すのがいちばん早いです。文章にしてから渡すと、AIはその調子に引っぱられ、確定させたはずの数字を言い換えます。
渡す中身は、次の5つで足ります。ブログやSNSの下書きを頼むときの型はAIにブログ下書きを頼む前に渡したい情報の型にまとめました。求人版は、確定した条件を先頭に置きます。
- 1. 確定した条件(6情報と、明示する労働条件)。ここは書き換えないでほしい、と添える
- 2. 募集の背景(増員か、欠員か、新店か)。応募者が最初に気にする点
- 3. 来てほしい人の像(経験年数、資格、働ける曜日)
- 4. 自店の事実(席数、スタッフ数、お客様の層、営業時間、休みの取り方)
- 5. 書かないでほしい表現(誇張、他店との比較、断定的な収入の話)
5つ目を入れておくと、手直しが減ります。禁止したい言い回しはお店ごとに違うので、一度決めたらメモに残し、次の募集でも同じものを貼るのが早いです。
AIに書かせると強くなる3か所
型どおりに渡しても、上がってきた原稿が前のめりになることがあります。応募を増やしたい部分ほど言葉が強くなりやすく、出やすいのは給与、職場の雰囲気、経験の有無の3か所です。
強い言葉そのものが問題なのではありません。条件の裏付けがない言葉を並べると、うそや誤解を招く表示に近づきます。
下書きに出てきやすい言い回し
下書きには「頑張り次第で高収入」「アットホームな職場」「未経験からでも安心のサポート体制」といった言葉が並びます。読んだ人には、いくらもらえるのか、何をどこまで教われるのかが分かりません。
条件に置き直した形
「基本給◯円+指名手当◯円/件。時間外手当は◯時間分を含み、超えた分は追加で支給」「研修は入社後3か月、週1回2時間。カリキュラムは面接時にお見せします」。数字と回数に置き換えます。
置き直すと、原稿は地味になります。それでいいと考えています。条件を先に確定させておくと、面接や入社後のすり合わせに使う時間を減らせます。
上がってきた原稿は、条件の部分だけ元のメモと突き合わせます。読み物として整っていても、数字が1桁変わっていることがあります。読み返す場所を条件に絞ると、施術中の合間にも見きれます。
手を動かす順番
整理すると、順番はこうなります。まず広告に出す6情報と明示する労働条件を自店で確定させ、箇条書きのままAIへ渡します。上がってきた原稿は条件だけを突き合わせ、最後に掲載する面をそろえます。
AIに任せられるのは、この4つのうち2番目だけです。条件を決めるのも、上がってきた原稿を突き合わせるのも人の仕事です。
4番目の掲載面は、募集を出したあとに崩れます。求人媒体に出したあと、自店のサイトやInstagram、店頭の貼り紙にも広がるためで、条件を変えたときに1か所だけ直して終わると古い数字が別の面に残ります。同じリーフレットにも、募集に関する情報を提供する場合は掲載した時点を明示するなど、正確かつ最新の内容に保つ義務がある、と書かれています。
AIに渡した条件メモに、掲載先のURLと貼り紙の場所を書き足しておくと、直すときも取り下げるときも全部たどれます。人手不足のときほど採用そのものを何とかしたくなりますが、効くのはその手前の作業です。この話は人手不足のサロンほど5分業務の標準化からでも取り上げています。
よくある質問
Instagramのストーリーズで募集するときも、6情報を全部書くのですか?
1店舗しかない場合、就業の場所の変更の範囲は何と書きますか?
AIが書いた求人原稿だと、応募者に分かってしまいませんか?
参考にした情報
この記事の条件まわりは、厚生労働省が公開している案内・リーフレット・Q&Aを確認して書きました(2026年9月4日時点)。実際に募集を出す前に、最新の内容をご覧ください。
出典
募集の原稿づくりに時間をかけたくない方へ
GlamAIサロン版のプロンプトライブラリでは、用途別の指示文を選んで使えます。求人の下書きを頼むときは、確定した条件を箇条書きのまま渡し、書き換えないでほしい部分を先に伝えておくと手直しが減ります。
プロンプトライブラリを見る